■日本における子どもへの虐待について
こども家庭庁の発表によると、2022年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数(速報値)は21万9,170件で、前年度より11,510件増加し、過去最多となりました。
虐待は主に4つに分類できます(こども家庭庁)。
身体的虐待:殴る、蹴る、やけどを負わせる、部屋に拘束するなど 等
性的虐待:子どもへの性行為、性行為を見せる、ポルノグラフィの被写体にする 等
ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、自動車の中に放置する 等
心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、目前DV 等
子どもへの虐待は、最も重大な権利侵害です。
虐待を受けた子どもへの影響は様々ですが、大きく「身体的影響」「知的発達面への影響」
「心理的影響」が見られます。
特に知的発達面への影響については、不安な環境下での生活による学習機会の損失やネグレクトにより登校がままならないことによる知的能力の未発達の他、親からの必要なやり取りがなかったり、逆に過大な要求を受けることによる知的発達の阻害など、影響は深刻です。
また、心理的影響においては、愛着障害や自己肯定感の低下はもとより、刺激に過敏になり多動になったり、PTSDを抱えたまま成長し問題行動を起こすこともあります。(厚生労働省「子ども虐待の援助に関する基本事項」)。
このため、虐待の認知と子どもの救出や緊急保護、安心していられる居場所や住宅の確保、自立に向けた幅広い支援が求められます。
■児童養護施設や里親家庭等の「社会的養護」の子どもたちが抱える課題
社会的養護とは、保護者のいない子どもや、何らかの理由により保護者が養育できない子どもを公的責任で社会的に養育することです。形態としては、乳児院や児童養護施設、里親家庭やファミリーホーム等が挙げられます。
日本には現在、約42,000人の子どもたちが社会的養護の元で暮らしています。児童養護施設にいる子どもについては、古くは親との死別のイメージが強かったですが、現在の社会的養護の措置理由で一番多いのは、保護者からの虐待です(こども家庭庁)。
社会的養護のもとで育った子どもたちは多くの課題を抱えています。
<育ちの中で>
理不尽な経験による自己肯定感の低下や愛着障害
経済的な理由や情報の不足、居住地の制限、ロールモデルの不在により将来が描けない
経済的理由による学歴が向上しにくい(学校の選択肢、アルバイト) 等
<自立において>
実家がなく、頼れる身近な大人がいない、孤独
退所してすぐに自立が求められるため経済的な不安がある
低学歴(全国の大学進学率50%以上に対し、児童養護施設の子どもたちの大学進学率は約12%/厚生労働省)、低所得による貧困
このため、学習支援やロールモデルとなる大人との出会い、さらには施設退所後のフォローなども求められています。
■虐待を受けた子どもや児童養護施設等の子どもに対するNPO等の取り組みの一例
<児童虐待に対して>
無料の子育て相談
児童虐待予防のための啓発
虐待を受ける子どもの緊急避難場所である「子どもシェルター」の運営
心理的虐待のひとつである目前DVから親子で避難するためのDVシェルターの運営 等
<児童養護施設等の子どもに対して>
自己肯定感を高めたり社会性に関わる力を伸ばすためのワークショップ
退所後に向けた自立支援
退所後の居場所づくり
奨学金の給付 等
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